2015年8月7日発行

難聴の対策不足は生活の質の低下につながる

研究により、新技術によって解決可能であることがわかる

http://www.apa.org/news/press/releases/2015/08/hearing-loss.aspx

(トロント)

アメリカ心理学会(American Psychological Association、APA)の第123回年次大会で発表されたプレゼンテーションにより、補聴器技術がうつ病や不安神経症の治療そして認知機能の改善に非常に効果的であるのにもかかわらず成人の難聴の治療が進んでいないことが明らかになりました。

 

自身も難聴を抱えるミシガン州ホープ大学の心理学教授であり教科書執筆者であるデイビッド・マイヤーズ博士は、多くの難聴患者は聴力の低下という目に見えない症状に対し誰にも言えず一人で苦しみ、周りの世界との協調にも消極的になり、また助けを求めづらい状況にあるといいます。

 

マイヤーズ博士は、2304人の難聴患者を対象に行ったNational Council on Aging(NCA)の研究において、補聴器を着用しなかった患者が悲壮感やうつ病に苦しむ可能性は補聴器を着用した患者よりも50%高いということを報告しました。また、補聴器を着用している難聴患者は社会活動にもより定期的に参加している傾向があるということもわかっています。

 

マイヤーズ博士は遺伝的な理由により10代のころから聴力を失い始めましたが、40歳台になるまで補聴器を使用しませんでした。他の多くの難聴患者と同じように補聴器技術に対する抵抗を感じていました。マイヤーズ博士が指摘するように、人々が難聴の第一次症状が出てから実際に治療を受け始めるまでの期間は平均6年であり、補聴器を使用している20歳から69歳までの成人数は補聴器を着用している70歳以上の高齢者の半分であることが全米保健医療統計センターの調べによってわかっています。博士は、難聴であることや補聴器に対する抵抗(難聴・補聴器は格好悪いと思う気持ちを含む)や治療しないことによってどれだけのものを失うか意識できていない状況がこのような治療開始の遅延を招いているとも主張します。

 

マイヤーズ博士によると、怒りの感情や欲求不満、うつ病、心配性は全て難聴を抱える人々に共通して見られるものです。最新の補聴器の使用を始めれば、生活のコントロールを取り戻し、精神状態の安定に加え認知機能の改善も望めると述べています。

 

マイヤーズ博士は主張の根拠として、「Archives of Neurology 」にて発表され難聴が認知症のリスク要因になりうることを発見しているもう一つの研究を挙げています。同研究に携わった研究者チームによると、聴覚などの感覚消失が数年続くと認知症が起こりやすいということが判明しています。さらに、難聴患者によく見られる社会的孤立も、認知症やその他認知障害のリスク要因として有名であるとマイヤーズ博士は付け加えています。

 

博士はヒアリングループ技術導入により難聴患者のより積極的な社会的活動を助けることができるとしています。ヒアリングループ技術には音声信号を内耳や人工内耳に直接伝達する、インターネットにおけるWi-Fiと同じような構造の磁気誘導ループが使われています。このループはテレコイルという誘導機器によって認識され、効力を発揮します。アメリカでは公共の場所にヒアリングループを設置する活動が12年に渡って行われました。結果、アメリカ国内で一般家庭のテレビルームやタクシーの車内、公会堂や空港といった様々な場所への設置向けのヒアリングループアンプを製造・販売する新しい製造会社は近年大幅に成長しました。

 

補聴器にワイヤレススピーカーのような働きを持たせるループシステムはイギリスや北欧諸国では人気ですが、アメリカにはあまり浸透していません。ループシステムの販促部によると、ループシステムは駅や教会・モスクなどの礼拝堂のような暗騒音や反響音の多い公共の場所で特に役立ちます。また、マイヤーズ博士の尽力によりミシガン州に500件以上ものヒアリングループ施設が導入されました。同博士は全米難聴者協会による(Hearing Loss Association of America、HLAA)のアリゾナ州、カリフォルニア州、コロラド州、フロリダ州、ミネソタ州、ニューメキシコ州、ユタ州、ワシントン州、そしてニューヨークシティ内のタクシー、加えてアメリカ合衆国下院や最高裁判所へのループシステム導入陳情にも協力しています。

 

マイヤーズ博士は公共の場所で補聴器に直接接続できる環境が整えば、心理的な意味でも難聴患者の生活に大きく貢献できると述べています。

 

セッション2211:

「A Quiet World: The Psychology of Hearing and Hearing Loss(静かな世界:聴覚と難聴に関する心理学)」招待演説

デイビッド・マイヤーズ(ホープ大学博士、South Buildingの716A研究室に金曜日午後1時から1時50分(EDT)まで在室。連絡先はRoom 716A, South Building, Level 700, Metro Toronto Convention Centre, 255 Front St. West, Toronto, Ontario, Canada)

 

同研究のプレゼンテーションはアメリカ心理学会のPublic Affairs Officeにて閲覧可能です。

 

デイビッド・マイヤーズ博士の連絡先は℡(616) 395-7728(事務所)、(616) 990-0415(研究室)です。またメールでも連絡可能です。

 

ワシントンD.Cのアメリカ心理学会(American Psychological Association、APA)はアメリカ最大の心理学研究機関です。APAには12万2500人以上の研究者、教育者、臨床医、コンサルタントそして学生を含む会員が所属しています。54の心理学分野を研究、そして州、準州、カナダ州を含め60地域と提携し、心理学の知識の発見、コミュニケーション、導入の発展を通じたより良い社会の生成と人々の生活改善に取り組んでいます。